‘収蔵作品の感想’

収蔵作品の感想。『スーパーマン;フォー・トゥモロー』全2巻

2015-12-13

fortom

店主です。

しばらく色んなことをサボっておりまして、大変申し訳ないです。今日は、先日「パコ様」より寄贈いただいた「スーパーマン;フォー・トゥモロー」のあらすじと感想を。ネタバレ箇所はあぶり出しにしていますので、ガス台から15cmほど離してスマホを置いた状態で30秒ほどお待ちください。スマホが壊れます。冗談です。ネタバレ箇所は画面をしたーの方までスクロールしたら見られるようにしておきます。

お話は。グリーンランタン(カイル・レナー)が何か大変な目に遭っていたので宇宙の果ての方まですっ飛んでいったスーパーマン。ランタンは無事助けたものの、不在にしている間、妻のロイスを含めて100万人が地球上から忽然と姿を消してしまう。一体誰が、何のために?スーパーマンはヒーローとしての活動を続けながら、ロイスの行方を探すが、何の手がかりもないまま1年が過ぎようとしていた…。

ストーリーは「ジョーカー」で知られるブライアン・アザレロ。アートはジム・リー様でございます。

本作には、カトリックの神父が出てきます。この神父は個人的な事情から神に対する信仰が揺らいでおり、苦悩しています。そんな彼の元を、スーパーマンが訪れます。スーパーマンは1年もの間、妻の行方を探す傍らヒーローとして活動し、予てより感じていた人々から自分に向けられる「畏れ」と妻の不在により、自らの存在する意義について悩みを募らせており、スーパーマンは神父に告白するようになります。

その後は色々あって、最終的に消失の謎も解き明かされてロイスとも再会するわけですが、読み終わって溜飲が下がるという感じではないですねえ。「え?そうなの?」っていうのが正直なところ。ストーリー全体に説得力も不足しているように思いました。

あと、本作は12号かけて語られたものをまとめたものなんですが、冗長さは否めません。今後の伏線を張る必要があったでしょうから、さすがに半分の6冊でできるとはいいませんけど、もっとスリムにして欲しいなあというのが私の感想です。

ただ、私なぞが言うのもおこがましいですが、アートはちょう素晴らしいです。ジム・リーの画が好きな方は読んで損はしないと思います。

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ネタバレ含む感想を読みたい方はここから画面をスクローーーーーーーーーーーーール

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず、私、メトロピア(消失した人々が転送された土地で、ネガティブ・ゾーンの上だか横だかにある)をスーパーマンが創造したっていう事実に対して、物凄く戸惑いました。

スーパーマンがこういうことをしたのには、「もし地球がクリプトンみたいなことになっても、自分の子供だけをロケットで他の星に送るのでなく、星の人々を全員救いたい」というれっきとした理由があるんですけど、「ああ、これはさすがに神っぽいことしすぎたな。」ってことで「深い瞑想に入り」、作ったという記憶を消しちゃうんですよ。ちょっとご都合が過ぎてませんかね?

それで、人々の消失の原因は、万が一のときのために多くの人をすぐに転送できるようにスーパーマンが作った装置を、ネガティブ・ゾーンからメトロピアにやってきたゾッド将軍が何とかして地球に送り返して、それを中東の紛争国の独裁者が兵器として使ったから。

これって完全にマッチポンプでは?

スーパーマンがメトロピアを作ろうと思い立った場面はロイスとのピロートークの最中で、それもごく短くしか描かれていないので、こちらを十分に納得させられてないです。

Mr.オア(ゴードン本部長に見た目がそっくりの謎の傭兵)とかよう分からん魔女の出番はもっと少なくして、神父との関係とメトロピアを作るに至った経緯を重点的に描いて欲しかったです。が、そうなるとそーとーに地味な見た目の作品になっちゃうか…。アクションできないですもんね。難しーなー。

以上、個人の感想でした。もしかしたら、色々な背景知識をお持ちのベテランファンの方は私とは違う感想なのかもしれませんね。再読したときに「おお!そういうことだったのか」という発見があるといいのですが。

収蔵作品の感想。『ファタール』1巻

2014-11-30

本日は、今月Sparklight Comicsから発売された『ファタール』の第1巻のあらすじと感想を。

ファタール

お話は。父の旧友で、自身の名付け親でもあった人気作家ドミニク・レインズの遺産管理人に指名されたニコラス・ラッシュは、レインズの葬儀の場でジョセフィーヌという謎の美女に出会う。レインズ邸で偶然未発表原稿を見つけたニコラス。と、外に人影が。黒服の男たちがレインズ邸に侵入してくる。ニコラスは訳も分からず謎の男たちに追われるが、ジョセフィーヌのおかげで一命を取り留める。しかし、ここからニコラスの運命は大きく狂い始める…。

物語はニコラスの生きる現代とドミニクが若かった1950年代を行き来する形で進みます。1巻の主な舞台は1956年頃のアメリカ。場所はサンフランシスコ。私は読んだことのあるノワール小説はジム・トンプソンの『内なる殺人者』のみの、ずぶの素人ですが、映画『L.A.コンフィデンシャル』を見て記憶に残っている50年代のアメリカの雰囲気が伝わってきます。

ドミニクはある新聞社に勤務する記者で、マフィアと懇ろな関係にあると疑われている悪徳警官の周りを嗅ぎまわっています。ドミニクは悪徳警官を追う過程で、ジョセフィーヌ(「ジョー」という愛称が女性のものだとわかるのにしばらくかかりました)という美女と知り合います。ん?またジョセフィーヌ?そうです。

これはネタバレにはならないと思いますので書きますが、ジョセフィーヌは美しいままずっと歳を取らない女性です。彼女は男を惑わす魅力に溢れており、彼女に関わった男性はことごとく恋に落ちてしまいます。タイトルが示す通り、ジョセフィーヌはファム・ファタール(その魅力で男を惹きつけて破滅に導く女)なのです。

1巻の後半では謎の教団による悪の手がドミニクとジョセフィーヌに迫ります。果たして二人はどうなるのか。そして、謎の美女、ジョセフィーヌはなぜ不死なのか…。

これはですねえ。非っっっ常に先が気になります。アメリカでは完結しているとのことですので、日本でも完訳していただきたい。お値段はなんと1,944円!やすい!しかも第1巻ですし、敷居も低い!買おう!

作者の紹介が遅れてしまいましたが、ライターは、『キャプテンアメリカ;ウィンター・ソルジャー』を手がけたエド・ブルベイカー。アーティストは『マーベル・ゾンビーズ』のショーン・フィリップスです。

買おう!などと上で書いたんですが、アマゾンでは一時的に在庫切れのようですから、当店に読みに来てください。お待ちしています。

収蔵作品の感想。『スパイダーマン;ステイシーの悲劇』

2014-11-28

店主です。今日は『スパイダーマン;ステイシーの悲劇(デス・オブ・ザ・ステイシーズ)』のあらすじと感想を。タイトルで既にネタバレてますから本稿でもネタバレますね。

spider
お話は。

高校から大学に進んだピーター・パーカーは奨学金を受けながら学業に励む傍ら、スパイダーマンとして悪と戦っていた。そんな折、刑務所に囚われていたドクター・オクトパスが脱獄する事件が発生。要人を人質を取り身代金を要求したり、火力発電所破壊を企図するなどの狼藉を働くドックオックとスパイダーマンが対決するが、一般人が巻き添えになってしまい・・・。

警察官だったグウェンの父が、ドックオックとスパイダーマンとの戦闘で起きた建物の一部崩落に巻き込まれそうになった子供の身代わりになって死んでしまった。グウェンは、父の死をスパイダーマンのせいだと考え、彼を憎むようになる。ノーマン・オズボーンはグリーン・ゴブリンであった記憶を失くしていたが、オズコープの経営悪化、息子ハリー・オズボーンの再びのドラッグ禍が重なり心身のバランスを崩し、グリーン・ゴブリンとしての記憶を取り戻し・・・。

映画『アメイジング・スパイダーマン』を二本ともご覧になった方はお分かりでしょうが、映画のストーリーの核を構成するふたつの死を描いた作品です。余りにも有名なエピソードではあるものの、実際に読んだことのある方は少ないんじゃないでしょうか。ずっと昔に光文社がモノクロで翻訳アメコミを出版していた時のラインナップにはありましたが、絶版になって久しいですから。

読んだ感想は、ずっしりと重い。これに尽きます。画が1970年代のそれであるのが救いでしょうか。このストーリーを今様の画でやったら相当にずーんと来るはずです。コミックス史に刻まれたグウェンの死のインパクトの大きさとそれにまつわる裏話については、当店で本書をお読みになって確かめていただければと思います。

グウェンはスパイダーマンの正体であるピーター・パーカーと交際中に父を亡くし、それをきっかけにスパイダーマンを憎み、あまつさえ彼女はスパイダーマンを悪人だと思い込んだままグリーン・ゴブリンに捕まった結果死亡してしまいます。余りにも悲しい最期だと言わざるを得ません。

私は『アメイジング・スパイダーマン2』で描かれたグウェンの死を見た時に、落下を急激に止めたためにその衝撃で背骨か首の骨が折れて死んでしまったのだと考えたのですが、コミックス版、『アメイジング・スパイダーマン2』共にグウェンがいつ死亡したのかには諸説あるようです。ただ、私としては、スパイディのウェブで落下を免れた衝撃でグウェンが死んでしまったと考える方が自然ですし、その方がピーターの業が一層深まると思います。

怒りに打ち震えるスパイダーマンは、グリーン・ゴブリンを殺すとゴブリンに宣言し、ゴブリンを滅多打ちにします。しかし、「ここでこいつを殺したら自分も奴と同じじゃないか」とすんでのところで思いとどまります。結局アクシデントでグリーン・ゴブリンは死んでしまうわけですが、スパイダーマンの心は晴れません。「ゴブリンが死ねば僕の気分もよくなると思ってた。それどころか僕の心は空っぽだ。…何も感じない」

ヒーローがもし一線を越えてヴィラン(悪党)を殺してしまったら、という状況を巧く実現させたと言えるでしょう。そして、私刑の果てにはやはり虚しさが待ち受けることを示唆するのです。

グウェンが死亡するエピソードをもってシルバーエイジは終わったと考える人は多く(無論そうは考えない人もいますが)、ブロンズエイジが始まります。コミックスはアルコール問題、ドラッグ問題、環境汚染問題等、現実社会の問題を色濃く反映したテーマを扱うことになります。

どうでもいい話ですが、ドクター・オクトパスは彼の武器であるアームから遠く離れた刑務所に収監されていました。ドックオックは、脱獄するためになんと「脳波を遠くまで届かせる訓練」を独房で行い、アームに刑務所を破壊させます。うーん・・・。大体、最高の頭脳を持つ天才なら絶対に他の方法を思いついたはずなのではと思うんですよね・・・。

収蔵作品の感想;『ホークアイ;マイ・ライフ・アズ・ア・ウェポン』

2014-10-25

店主です。今日は『ホークアイ;マイ・ライフ・アズ・ア・ウェポン』の感想を。

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お話は。アベンジャーズの一員なのに、ただの人間のホークアイことクリント・バートン。彼はアベンジャーズとしての任務以外でも悪と戦っている。自分の住んでいるボロアパートを守るために。悪が悪から奪うのを阻止するために。懇ろになった女性を守るために。SHIELDに潜む悪をあぶり出すために。ホークアイはどんな日常を送っているのか…。というもの。

ほとんどが一話で完結しますし、本作の前後を気にすることなく読める作品です。あまり知識がない方のために、キャラクター解説と註もついていますからご安心を。

ホークアイは元サーカス団員。両親を早く亡くした彼は兄とともに孤児院を抜けだしてサーカス団に入りました。そこで彼はナイフ投げと弓の技術を習得します。当初ホークアイはアイアンマンと対決するヴィラン(悪役)として、アイアンマンと対決していましたが、後に改心します。

アベンジャーズに加入してからは、アベンジャーズを抜けたり、結婚したり、死んだり生き返ったりして現在に至ります。

ホークアイはアベンジャーですが、特殊な能力を持ち合わせていない普通の人間です。彼は攻撃されれば傷つくし、莫大な資産も持ってない。恋愛して結婚するけど上手くいかなかったり、極めて人間的。感情移入しやすいヒーローであると言えます。

ホークアイの相棒は、ケイト・ビショップ。こちらも弓の名手で、かつて2代目ホークアイとして、ヤング・アベンジャーズで活動していました。ブラック・ジャックで言うところのピノコ的な位置だと思ってください。

本作の各エピソードに共通するのは大型クロスオーバーでは見られない、ホークアイの日常における間の悪さと運の悪さが描かれている点ですね。アベンジャーとしての活動ではないからか、彼は本作でコスチュームを着ていません。グッとくるのは、ホークアイはあくまで人間なので、悪漢と戦闘になっても意外とすぐやられちゃうことです。

後半のエピソードでは、海兵隊員が殺害したと報道されていたテロリストをホークアイが殺害する場面を写したビデオテープが出てきて、緊迫します。アベンジャーズ、SHIELDは国民を欺いていたのか?最後はご自身で確かめてください。

アートは、デイビッド・アジャとハビエル・プリードが担当しています。我々が一般的にイメージする所謂「アメコミ」っぽさはあんまりありません。コマは割と小さめで、色もどぎつくなく、アートと調和しています。

映画『アベンジャーズ』でホークアイが好きになったあなたに是非読んでいただきたい一冊です。

収蔵作品の感想;『バットマン;喪われた絆』

2014-08-10

店主です。新刊の『バットマン;喪われた絆』の感想を書きたいと思います。

バットマン喪われた絆

お話は。ジョーカーがゴッサムシティから姿を消してから1年。記録的な大雨がゴッサムを襲い、双頭の獣が動物園で生まれ、人々はこれらは凶兆だと噂した。降り続く雨の中、ジョーカーはゴッサム警察を急襲、警察に押収されていた自らの顔の皮を奪還する。ジョーカーの帰還に色めき立つバットファミリー。ジョーカーはバットマンと対峙しつつもバットファミリーを次々と襲って行く。ジョーカーの目論見とは一体何なのか…

NEW52の開始により一旦諸々の設定が仕切り直されたDCユニバース。「Detective Comics#1」で、ジョーカーはドールメーカーという人物に、自らの顔の皮を剥がさせています(『NEW52;バットマン』に収録されている)。ジョーカーは一体なぜそんなことをしたのか、誰でも気になるところです。

あいにく、『NEW52;バットマン』には同コミックスの#2が収録されていないので、インターネット上で「why Joker face off」とキーワードを入れて調べてみると、まさに私が抱いたのと同じ疑問を持っている人が、知恵袋サイトの一種に書き込みをしていました。

Why did Joker let his face get cut off? という質問には色んな回答がついていましたが、確たるものは何もないというのが私の見た限りの結論でした(中には、「(ジョーカーが顔の皮を剥いだのは)編集部がNEW52のスタートに、インパクトある事件が欲しかっただけだろう」という「大人の事情」があったんだよという書き込みも)。

長々と書きましたが、ジョーカーが自分の顔の皮を剥いで再度縫い付けたことについては特にストーリーに大きくは関係してきません、ということだけ頭に入れておいてください。

本作の原題は「Death of the family」なんですが、「喪われた絆」という邦題は読後のイメージにピッタリだなと感じました。あまり踏み込んだことは書きませんが、本作ではバットマンとバットファミリーの絆が危機に瀕します。

本作のジョーカーの言動を見ると、彼はバットファミリーに嫉妬してるようです。クライマックスでジョーカーはバットマンに「奴ら(バットファミリー)は家族じゃねえ!おれが家族だ!」と言います。絆とやらで繋がっている奴らは家族なんかじゃなく、バットマンと正反対であるが故にバットマンを最も理解している自分こそが家族なんだ、ということでしょうか。

この作品は、バットマン誌だけでなく、他のヒーローのコミックスともクロスオーバーしているので、全貌は『ジョーカー;喪われた絆<上>』『同<下>』で明らかになると思われます。

アートはグレッグ・カプロが担当しており、『梟の法廷』から読み始めた方に優しい布陣です。勿論、画は相変わらずカッコいいので、みなさんにお薦めします。

収蔵作品の感想。『バットマン;ロングハロウィーンvol.2』

2014-07-02

立て続けにいきましょう。『ロングハロウィーンvol.2』の感想です。

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お話は。事件はハロウィーンの日に始まった。謎の連続殺人犯「ホリディ」は祝日に合わせて人を殺し続け、ゴッサム市警、検察、バットマンはホリディを捕まえられずにいた。一体ホリディとは何者なのか?マフィアの関係者が次々と殺害され、ゴッサムシティの暗黒街の主役はマフィアからタイツを身につけた「フリークども」に移っていく。そして、ついにホリディの正体が明らかになる・・・というもの。

本作は、『ロングハロウィーンvol.1』の続きで、『ロングハロウィーン』の完結編です。重大なネタバレはありませんので、そこらへんはご安心ください。

本作の冒頭、アーカム刑務所からはヴィラン(悪党)たちが脱走し、物語はいよいよ佳境に入ります。ローマンとブルース・ウェインの意外な因縁が明らかになり、ローマンファミリーとマローニファミリーの関係が悪化、抗争に突入し、ホリディの殺人は続きます。

ハービー・デントがホリディなのではないかという疑念はバットマンの中で更に大きくなる一方、デントはある事件でトゥーフェイスに変貌してしまうんですね。

ホリディの正体は明らかになるんですが、容疑者の証言にはそれぞれ食い違いがあり、さながら芥川龍之介の『藪の中』の様相を呈してきます。誰が話していることが本当で、誰が嘘をついているのか。どの話も本当のような気もするが、怪しい点も同時に存在する。

バットマンの登場から2年足らずでマフィアの時代は終わり、コスチュームをまとったヴィラン達が、ゴッサムシティの犯罪者の主流になっていきます。『バットマン;イヤーワン・イヤーツー』、『ロングハロウィーンvol1』、『同vol.2』は、「ブルース・ウェインは如何にしてバットマンとなったのか」を知るのに最適な作品だと思います。迷ったらこの3冊から読んでみてはいかがでしょうか。

あ、ホリディが誰だったかについては、こちらのサイトに詳しい考察が載っておりますので、興味のある方は是非リンク先をお読みになってください。

収蔵作品の感想。『バットマン;ロングハロウィーンvol.1』

2014-07-02

どうも。店主です。今日は、『バットマン;ロングハロウィーンvol.1』の感想を。

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お話は。バットマンがゴッサムシティの犯罪と戦い始めてから1年後。ハロウィーンの夜に突如現れた連続殺人鬼、「ホリディ」。サンクスギビング、クリスマス、大晦日。ホリディは祝日が来る度に犯行を重ねる。犯罪都市ゴッサムの浄化に立ち上がった、市警の警部ジェームズ・ゴードン、地方検事ハービー・デント、そして、クライムファイター、バットマンの三人は、神出鬼没のホリディに翻弄されながらも、理想の実現のために奔走するが…というもの。

映画『ダークナイト』のモチーフになった作品だそうです。ゴードン警部、ハービー・デント、バットマンの3人が犯罪撲滅のため協力する、というところとハービー・デントの末路以外はそれほど共通点はなく、確かに「原作」とは言えないですね。『vol.2』で完結です。

本作は不可解な連続殺人事件の犯人、「ホリディ」の正体は一体誰なのか?という謎解きがメインに据えられています。小出しにされる手がかり、怪しそうな人物の登場と退場。いともあっさりと祝日毎に連続殺人をやってのけるホリディは誰なのか?読み始めると先が気になってグイグイ引きこまれます。

ホリディはマフィアを標的にしているようにも見えますが、確かなことは言えません。バットマンは独自捜査でホリディに迫ります。その最中、バットマンはハービー・デントにある疑念を抱くことになるのですが、どんな疑いなのかは本書を読んで直接確かめてみてください。

ホリディは祝日に人を殺しますが、日付に因んだ犯罪を犯すヴィラン(悪党)には「カレンダーマン」というキャラクターもいます。本作では、アーカム・アサイラムに収監されているカレンダーマンが『羊たちの沈黙』のレクター博士っぽい感じで出てきます。『バットマン;グレイテスト・ストーリーズ・エバー・トールド』にも登場するカレンダーマン。『グレイテスト』では割と呑気なキャラクターだったのに、随分と深刻な感じになってます。それにしてもカレンダーマンって『キン肉マン』に出てくる弱い超人みたいな名前ですよね。

話がそれちゃいましたね。他のブログ等でも言及されていますが、本作のテーマは「信頼」ではないかと私も思います。信頼している。信頼されていないのではないか。信頼したい。信頼しなければ。様々な想いや感情が交錯し、ストーリーを盛り上げていきます。

果たしてホリディは誰なのか?ゴッサムシティの未来は明るいのか?次巻もきっと読みたくなりますよ。

収蔵作品の感想。『バットマン;イヤーツー』

2014-06-29

バットマン;イヤーツーの感想を。

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お話は。ブルース・ウェインがバットマンとして活動を始めて2年目のこと。かつてゴッサムシティを恐怖に陥れた殺人鬼、リーパーが復活した。リーパーは自ら見つけ出した犯罪者を次々と処刑していく。リーパーに挑んだバットマンだが、経験の差から手酷い返り討ちにあってしまい、己の無力さを思い知る。そして、バットマンはそれまで忌避してきたある武器(って上の画像載せたらすぐバレちゃいますよね)を手にしてしまう。リーパーを打倒するためにマフィアとすら手を組んだバットマンは、思いもよらない人物と行動を共にすることになり…というもの。

本作は、バットマンがゴッサムシティに登場してから2年目の出来事を描いています。殺人鬼リーパーが復活し、犯罪者を次々と殺していきます。リーパーとバットマンは二人とも犯罪者を街から駆除しようとしていますが、決定的に違う点が一つ。

それは、私刑容認の有無です。バットマンは、捕らえた犯罪者には法による裁きを受けさせるが、リーパーは犯罪者は容赦なく殺害します。リーパーはバットマンのことを自分の後継者であるとバットマンに伝えますが、バットマンは頑なに否定します。

バットマンはリーパーに戦いを挑むものの、為す術もなく返り討ちに遭い、這々の体で屋敷に辿り着いたバットマンは圧倒的な力の差を痛感し、最も嫌っていた武器、両親の命を奪った武器、銃を手にしてしまいます。

更に、リーパーを捕まえるためにバットマンはマフィアに近づきますが、そこでとんでもない人物に遭遇します。バットマンはリーパーを捕らえ、無事に法の裁きを受けさせられるのか。そして、「とんでもない人物」とは誰なのか。気になったあなたは是非当店で確かめてみてください。

「イヤーワン」はアートをデビット・マッズケリ(「デアデビル;ボーン・アゲイン」でも作画してます)が担当しており、画面は暗く、シンプルな描線でした。本作は一転して赤や青が鮮やかに使われています。作画は、第1章がアラン・デイビス。第2~4章がトッド・マクファーレンです。SPAWNを彷彿させるなが~いマントが印象的。

解説を読むと、「イヤーワン」はバットマンのオリジンとして盤石のものとなっているようですが、本作はなかったことにされているようです。まあ、あの人物との共闘しああいう結末になってしまった(分かりにくくてすいません)ことから、それも致し方ないことなんでしょう。

「イヤーワン」に比べると見劣りはしますが、もちろん、読んで損するようなクオリティの作品ではありませんので、ご安心ください。

収蔵作品の感想。『バットマン;イヤーワン』

2014-06-21

店主です。

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「みるみるわかるバットマン」に向けて、バットマン作品を色々と読んでいます。傑作との呼び声高い『バットマン;イヤーワン/イヤーツー』のうち、『イヤーワン』の感想を。「テメー、アメコミカフェやってんのにまだ読んでなかったのかよ?」と思われる方もいらっしゃると思いますがご容赦ください。

お話は。同僚を汚職の罪で告発したことにより、ゴッサム・シティに左遷されたジェームズ・ゴードン警部補は、身重の妻とともに街へやってきた。ちょうどその頃、ゴッサム・シティの名家ウェイン家の子息、ブルース・ウェインが12年の外遊から帰国する。ブルースは自らの手でゴッサム・シティから犯罪を撲滅するため、服装を変え、肌の色を変え、顔に特殊メイクを施し自警活動を始めるものの、犯罪者たちは彼を恐れず、街を浄化する第一歩すら完遂できないまま満身創痍で屋敷に辿り着く。ブルースは屋敷に飛び込んできたコウモリに着想を得、犯罪者に恐怖を植えつけるため、コウモリの化身として犯罪者と戦うことを決意する…というもの。

ストーリーを担当したのは、『バットマン;ダークナイト・リターンズ』のフランク・ミラーです。『リターンズ』では年老いたブルース・ウェインのバットマンとしての帰還を描きましたが、一転して、本作ではバットマンのオリジン(誕生譚)を描きます。

本作はそのタイトルの示す通り、ブルース・ウェインがいかにしてバットマンになったかを描く物語です。本作でバットマンはゴードン警部補(後のゴードン本部長)と出会い、協力しあうようになります。ジョーカーやトゥー・フェイス等の派手なヴィラン(悪党)は出てきませんけども、ブルース・ウェインとゴードン警部補のストーリーが細やかに語られます。

物語の舞台のゴッサム・シティの治安は最悪です。ギャングが跋扈し、街で強盗ひったくりの被害に遭うのは当たり前、警官はギャングからカネをもらい犯罪を見逃しているのです。自警活動をして治安の向上に貢献するバットマンでしたが、法の執行者でないという理由で警察に追われる身となります。この辺りは映画『バットマン;ダークナイト』とオーバーラップしますね。

犯罪と闘いながら警察内の腐敗を根絶しようとするゴードン警部でしたが、あまりの犯罪件数の多さと汚職の酷さからか、身重の妻がありながら同僚の女性刑事と親密になってしまいます。そして、警察内部の汚職警官の一派からそこにつけ込まれ、生まれたばかりの子をマフィアに誘拐されてしまいます。ゴードン警部補は無事に子を奪還できたのか。結末は是非ご自身で確かめてみてください。

付録の解説によると、バットマンのオリジンとしては、これが決定版だとされているようで、確かに納得の出来栄えです。バットマンの誕生譚としてはもちろん、ゴードン本部長の誕生譚にもなっています。とにかく清廉潔白なイメージのあるゴードン本部長ですが、ダメなことだと理性では分かっているのに同僚の女性刑事と親しくなり、妻と一緒に寝ているベッドの上で罪悪感に苛まれる描写(チャプター3の最終ページ)に胸が苦しくなります。

「バットマンってなんでバットマンになったの?」というあなたの疑問にちゃんと答えてくれる名作です。当店にいらっしゃった際には是非手に取って読んでみてください。

収蔵作品の感想;その5『デイトリッパー』

2014-05-09

『デイトリッパー』の感想を書きます。

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お話は。ブラジル人のブラス・オリヴァ・ドミンゴスは新聞の死亡記事執筆担当者。人々がどのように生まれ育ち、どのような思いを抱いて暮らし、そして死んでいったのかを毎日記事にしていた。ある日、ブラスは、自分が記事を書いていない日も、人は毎日死んでゆくことに気がつく。死は誰にとっても、ブラスにとっても平等に、突然に訪れる。高名な小説家である父への思慕と劣等の入り混じった想いを抱えて入ったバーで、学生時代の最後に親友と訪れた海辺で、真実の愛に気付いた街角で、ブラスは様々な死を迎える・・・というもの。

と、書いても今ひとつどんな話か分からないですよね。うまく説明できるか分かりませんが、やってみます。主人公は、ブラス・オリヴァ・ドミンゴスという新聞の死亡記事執筆担当者です。ブラスは一つの章を除く全ての章の最後で必ず死ぬんです。ある時は感電死し、ある時は事故死し、ある時は人に殺される。

それぞれの章には、ブラスのその時の年齢、例えば32歳の時の話なら、「第◯章;32」がつけられています。ブラスの子供の時代から大学、就職、作家としてのデビューなど人生の様々なシーンが綴られていき、各章でブラスは死を迎えます。

並行宇宙の存在を考慮に入れないとすれば、これは、あの時に死んでいたかもしれないブラスとその家族に訪れた物語ということになると思います。

物語の中の盛り上がりもなく、ブラスは本当に呆気なく死にます。身近な人が突然死んだ経験のある人もいらっしゃると思いますが、あの、全ての感覚が遮断されて自分の周り半径1メートルくらいが「精神と時の部屋」みたいな感じになるのは本当に嫌なものです。

結局、本作のテーマは「メメント・モリ(死を思え)」ってことなんですよね。有り体ですけど。ただ、全然押し付けがましくないし、主人公の肩書もいやらしくなく、説教臭くもない。凄く好感が持てました。

人間の好奇心は無限のように思われますが、どうやっても分からないことは確かにあり、それのうちの一つが死です。起きたあとにどうなるか分からないことは恐れの対象になり、だからこそ数々の死後の世界の物語や信仰が生まれたのでしょう。「そういうことにすること」によって、死は「分からないもの」から「いくらか分かるもの」になります。ただ、完全には分からないのでそれを想起させるものが廃除されているんですね、きっと。これが死にまつわるイメージや情報は現代において忌避されている理由だと私は思います。

日本に住んでいると、街中で人や動物の死体を見たり、家畜を潰したりしたことがある人は多くはありません。しかし、2011年の東日本大震災で、非常に多くの方が死を目にし、耳にしました。あの時私たちは突然、死に胸ぐらをつかまれたわけです。

出来事が衝撃的であるが故に、私を含め「いつ死ぬか分からないのだから、精一杯生きよう。家族との時間を大切にしよう」と劇的に回心するものの、やがてまたゆっくりと「何も今日が人生最後の日じゃあるまいし」と元の考えに戻ってしまいます。ただ、この元に戻ってしまう機能は、心の恒常性とも言うべきもので、これがないと人間は参ってしまうんじゃないでしょうか。

この作品を読むたび、あなたはきっと死を思い、一時的に今を大事にし、そしてまた元に戻ってしまうでしょう。でも、そうなったら、また読み直せばいいのです。

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