アメコミ漫画喫茶「ACBD」

マーベルやDCコミックなどの名作・傑作マンガと、その映画の評判・評価・レビュー・口コミ(クチコミ)です。

【参考】
Pen+(ペン・プラス) DC最強読本。

アメコミ映画ランキング(歴代ベスト)

順位 作品名、公開年、動画 解説
スーパーマン

(1978年)

ロッテン・トマトの評価:87%

原作:DCコミックス
「アメコミ映画の元祖」と呼ばれている。

スーパーマンは1938年にコミックとして登場した。 この映画の段階ですでに40年経っていた。 1950年代に白黒映画になったこともあった。

本作は、従来のアメコミ映画とはケタ違いのクオリティーを実現した。 ハリウッドの一級映画として位置づけられた。 評論家からも称賛された。 商業的にも大成功した。

本作と続編「スーパーマン2」のメガヒットにより、 アメコミのヒーローものが、劇場向けの一流作品として成立し得ることが証明された。

この作品が画期的だったのは、ドラマ性が豊かであり、大人も楽しめる点にある。 同時に、子供向けの王道ヒーロー映画としても成立している。

また、超一流から新人までを組み合わせた俳優の配役(キャスティング)も、見事にハマった。 中でも本作が事実上の映画デビューとなったクリストファー・リーヴは大当たりだった。 さらに、SF作品としての技術面でも極めて高いレベルを達成した。 スーパーマンが飛ぶシーンなど、ヒーローたちの超人技を再現する特撮や視覚効果も素晴らしかった。

公開当時の1970年代のアメリカは、厳しい時代を迎えていた。 ベトナム戦争、ウォーターゲート事件で自信を失った。 オイルショックによって経済の調子も良くなかった。 1960年代の反抗文化(カウンター・カルチャー)がひと段落し、ニヒルで冷めた空気があった。 こうしたなか、スーパーマンといえば、当時すでに「やや古臭い」というイメージもあった。 「今さら青タイツ、赤パンツのヒーローものか」というムードが出ても、不思議ではなかった。 しかし、本作は斜に構えることなく、「正義」というテーマに正面から取り組んだ。ヒーローものの原点回帰に挑んだのだ。 結果、アメリカ国民に大歓迎された。

前年の『スター・ウォーズ』から始まったSF映画のブームも追い風になった。

本作は、スーパーマンの起源から描いている。 惑星クリプトンで、スーパーマンが赤ん坊として育てられているところから物語が始まる。 全体が3部構成になっている。「赤ん坊時代」「田舎の学生時代」「新聞記者&スーパーマン時代」である。

監督は、リチャード・ドナーが務めた。名作ホラー映画「オーメン」で名を馳せていた。

【史上最高の製作費】
当時としては史上最高の製作費5500万ドルが投じられた。 続編の「スーパーマン2」と一緒に撮影された。

【興行収入】
世界の興行収入は3億ドル。 1978年の興行収入ランキングで2位となった。(1位はミュージカル「グリース」)

【アカデミー賞】
アカデミー賞では4部門にノミネートされた。 映像特殊効果賞、編集賞、音響賞、作曲賞である。 このうち、映像特殊効果賞の受賞を果たした。

【特撮映像】 映像の特殊効果の面において、画期的な到達を成し遂げた。 「人が空を飛ぶ」というシーンをリアルに作り上げた功績は大きい。 スーパーマンの優雅でダイナミックな飛行シーンは、たいへん魅力的である。

【ハリウッドの本流に】
この映画の大成功により、 アメコミ映画がハリウッドの本流として位置づけられるようになった。 それまでは「亜流」「B級以下」の扱いだった。

【超大物俳優】
超大物の俳優たちが起用された。

◆マーロン・ブランド
何といっても、スーパーマンの父親役として、マーロン・ブランドが登場する。 「20世紀最高の俳優」とも言われる役者である。 「ゴッドファーザー」(1972年)などで伝説的な演技をしてきたブランドのキャスティングは、 映画業界を驚かせた。

◆ジーン・ハックマン
悪役にはジーン・ハックマンが務めた。 「フレンチ・コネクション」(1971年)でアカデミー賞の主演男優賞を受賞しており、 すでに超一流の役者として引っ張りだこだった。

【主役は無名俳優】
◆クリストファー・リーヴ
クリストファー・リーヴは、オーディションを受けた200人以上の役者の中から主人公のスーパーマン(クラーク・ケント)役に選ばれた。

リーブはニューヨーク出身。 22歳のとき、 ブロードウェイの劇場の芝居でデビューした。 オーディションをしているところを、「20世紀最高の女優」とも言われるキャサリン・ヘプバーンに見いだされた。 リーヴ(当時22歳)とヘプバーン(当時67歳、独身)は仲が良く、恋愛関係の噂もあった。 とはいえ、映画の世界では全くの無名。 子供のころから子役俳優をやっていたとはいえ、 いずれも「ちょい役」だった。 本人もオーディションに受かる可能性は低いと考えていた。

スーパーマン役の俳優の人選をめぐって、 当初は、ロバート・レッドフォード、バート・レイノルズ、ポール・ニューマンなどの一流スターが検討された。 ただ、いずれも断られるなどして、実現しなかった。

そこで、無名の役者を対象に、大規模なオーディションが行われた。 200人以上が応募した。 アーノルド・シュワルツネガーもその一人だった。 しかし、人選は難航した。 プロデューサーの一人、イリヤ・サルキンド(メキシコ人)の奥さんが通っている歯医者さんの映像試験(スクリーン・テスト)をしたこともあったという。

そこで、ドナー監督とイリヤ・サルキンドは、リーブの映像試験を行うことにした。 監督らはリーヴに感銘を受けた。 しかし「体格が華奢(きゃしゃ)すぎる」と考えた、このため、筋肉スーツを着用するように言われた。 リーヴはこれを拒否した。過酷な筋トレに励んだ。 こうして主役に大抜擢された。

ギャラは格安だった。 続編の「スーパーマン2」と合計で25万ドルである。 彼の演技は、大絶賛を浴びた。 史上最強のスーパーマン役者として伝説となった。

【音楽】
作曲家ジョン・ウィリアムによる音楽も激賞された。 ウィリアムズはすでに、「ジョーズ」(1975年)、「スター・ウォーズ」(1977年)などの優れた音楽を次々と手掛けていた。アカデミー賞の作曲賞を2度受賞するなど、神的な活躍をしていた。 本作でもアカデミー賞にノミネートされた。

【ゴッドファーザーの脚本家】
脚本家はマリオ・プーゾが書いた。 「ゴッドファーザー1」「2」の脚本を執筆した超大物である。 プーゾの報酬は60万ドルだった。 この人選は、製作側がいかにドラマ性を重視していたかが分かる。 書きあがった脚本はやや長すぎた。 そこで、「俺たちに明日はない」などで知られるデビッド・ニューマンらを雇い、修正が加えられた。
ダークナイト

(2008年)

ロッテン・トマトの評価:94%
ノーラン3部作の2作目にあたる。バットマン映画の最高峰。

悪役のジョーカーがさく裂した。

アカデミー賞に作品賞にノミネートされず、ファンが怒った。これを受けて、翌年からアカデミー賞の作品賞のノミネート枠が「5」から「最大10」に拡大された。

助演男優賞は受賞した。受賞者は、ジョーカーを演じたピース・レジャー。 レジャーは役作りにのめり込んだ末、過労と薬物の過剰摂取で命を落とした。 28歳の早すぎる死だった。 コミック原作映画の俳優でオスカーを受けたのは、これが初めてのことだった。

ジョーカーは、前作「バットマン・ビギンズ」のラストでその存在が示唆されていた。 本作では狂人ぶりをいかんなく発揮。 ゴッサムシティを、そしてヒーローの人生を混屯の渦に叩き込んだ。

前作は興行的には期待を下回ったが、続編の本作はビジネスの面でも大成功を収めた。
アベンジャーズ/エンドゲーム

(2019年)

ロッテン・トマトの評価:94%
2010年代にボックスオフィスを席けんしたマーベル映画の集大成。

「アベンジャーズ」を軸とするシリーズの帰結点となった。

ファンが熱狂した。

興行収入も、映画史上最高を記録した。

弱点は、過去の作品を見ないと、あまりよく理解できないこと。
ブラックパンサー

(2018年)

ロッテン・トマトの評価:96%
アカデミー賞にノミネートされた。アメコミ映画として史上初の快挙だった。

主要キャストが黒人だったという点も画期的だった。

美術などの点でも、高いレベルだった。アート関連のアカデミー賞を受賞した。

アメコミが好きでない人も、この映画にはハマった。
バットマン

(1989年)

ロッテン・トマトの評価:71%
社会現象を巻き起こした。シンドローム(症候群)と呼ばれるほどのブームになった。

バットマンは黒装束に黒マント、胸にロゴマーク(コウモリのマーク)をつけている。 正義の味方だ。 この映画の半世紀前、漫画の主人公として産声を上げた。

1940年代、アニメとして映画化された。 1960年代にはテレビ・シリーズとして5年間放映された。 1966年、アダム・ウエスト、シーザー・ロメロの共演で映画化された。 日本でも公開された。

監督はティム・バートンが起用された。 このときまだ30歳だった。 コメディ的なホラー映画「ビートルジュース」を大成功させた実績が買われた。

悪役ジョーカーを、ジャック・ニコルソンが存在感たっぷりに演じた。アクの強い演技と奇抜なメークで他を圧倒する。 まさに怪優だ。

犯罪がはびこった都市で思いのままに悪を働くジョーカー。 化学工場を乗っ取ると、化粧品に毒を混ぜ、街に毒ガスをまく。

このジョーカーを、 バットマンに変身した若き大富豪(マイケル・キートン)が退治しようとする。

43歳の敏腕プロデューサー、ジョン・ピータースが盟友ピーター・グーバーと組んだ。 このコンビは、「フラッシュダンス」「カラー・パープル」「レインマン」などのヒット作を生み出していた。

当時、アメリカは犯罪の多発が大きな問題になっていた。 それだけに、悪人に容赦しないバットマンは支持された。 バットマンは、法のワクをはみ出してでも、犯罪者をやっつけようとする。 その姿勢が、正義を望む大衆に歓迎された。

キャラクター商品も飛ぶように売れた。 、Tシャツや文具、おもちゃにバットマンのロゴマークがあふれた。
スーパーマン2

(1980年)

ロッテン・トマトの評価:87%
プロデューサーのサルキンド父子は『三銃士』と続編『四銃士』を同時に撮っていたノウハウで『スーパーマン』と『II』も同時撮影していたが、監督のドナーが途中降板。 劇場公開された「II」はドナーの構想とは違うものになった。
アイアンマン

(2008年)

ロッテン・トマトの評価:94%
マーベルのMCUの原点となった。高い評価を得た。
ワンダーウーマン

(2017年)

ロッテン・トマトの評価:93%
女性のスーパーヒーローがついに映画で大成功した。

監督はパティ・ジエンキンス。

10 ジョーカー

(2019年)

ロッテン・トマトの評価:68%
アカデミー賞にノミネートされた。
11 スパイダーマン:スパイダーバース

(2018年)

ロッテン・トマトの評価:97%
アニメ映画の新境地を拓いた。
12 バットマン ビギンズ

(2005年)

ロッテン・トマトの評価:84%
ノーラン3部作の原点である。

リアリズムを追求し、バットマンを改めてダークヒーローとして描く、という試みは大成功となり、ノーラン版バットマン映画が3部作の形で作られることになる。

ノーランは2008年の2作目からバットマンではなくダークナイト(バットマンの別称)をタイトルに使うようになり、従ってノーランの3作は「ダークナイト」トリロジーと呼ばれる。

幼くして両親を犯罪者に殺された大富豪、ブルース・ウェイン(クリスチャン・ベイル)。

映画はタイトルの通り、主人公が犯罪を根絶やしにするための孤独な戦いに身を投じる過程を描く。

誰もが知るコミック・ヒーロー、その出自から持ち物に至るまでのすべてに理詰めのバックグラウンドを再設定しようという試み。

使い捨てのバット装備は数を揃える必要があるため、金にものを言わせて中国に大量発注する、といった描写が微笑ましい。

あるいはおなじみバットモービルにしても本来はウェインが自社で開発した軍用車両であるなど、生真面目なリアリズム描写は全篇に徹底している。

映画は全世界で3.7億ドルの興収を記録した。
13 バットマン/マスク・オブ・ファンタズム

(1993年)

ロッテン・トマトの評価:84%
バットマンで最初のアニメ
14 スパイダーマン2

(2004年)

ロッテン・トマトの評価:93%
「1」よりも好きな人が多かった。
15 ローガン

(2017年)

ロッテン・トマトの評価:93%
大人の映画として高く評価された。




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ヒーローが次々と…アメコミ原作「ウォッチメン」

2009年3月、スポーツニッポン新聞

ヒーローが次々と殺されるヒーロー映画!2009年3月28日公開

アメリカンコミックが原作の米映画「ウォッチメン」が2009年3月28日に公開される。「スパイダーマン」や「バットマン」などと比べ、日本での知名度はほとんどない。 しかしこの作品の映画化権をめぐって、米メジャー映画会社のワーナー・ブラザースと20世紀フォックスの弁護士による泥沼寸前の法廷闘争が展開された。

ワーナーとフォックスが法廷闘争までした
JFK暗殺、ベトナム戦争…歴史の裏の陰謀描く

2009年1月11日、東京のJR山手線全駅に、巨大な黄色いスマイルマークが出現した。ニコリとほほえむ顔の上に一滴の血。「ウォッチメン」のタイトルと「知ってはならない、真実がある--」のコピー。映画のPR看板だった。耳慣れないタイトルだったため、配給・宣伝会社には「“ウォッチメン”って何ですか?」と問い合わせが相次いだという。

リアリティーで人気に

スパイダーマンやバットマンのようにヒーローのビジュアルが想像できないが、全世界のアメリカンコミック(アメコミ)ファンの間では、実は伝説的な作品だ。1986年に発売。1988年にはSF小説の権威ある賞「ヒューゴー賞」特別部門をコミックとして初受賞(現在までコミックの受賞はなし)。さらに2005年には、米タイム誌による「1923年以降の長編小説ベスト100」にも選ばれている。

物語は、米ソ冷戦のまっただ中、ニクソン大統領が3選を果たしている世界。あるヒーローが暗殺されたことから巨大な陰謀が動きだす。

米公開3日間シェア50%

全米では2009年3月6日に3611館で公開。公開3日間のシェアは50%で、2人に1人が「ウォッチメン」を見たという驚くべき現象が生まれた。洋画関係者によると「50%を占めたという話はほとんど聞いたことがない」という。好調なスタートを切った「ウォッチメン」だが、実はお蔵入りの危機に見舞われていた。最初に映画化権を獲得したフォックスが製作したワーナーを「権利の侵害」と提訴し、公開差し止めの可能性があったのだ。

ワーナーはなぜ、巨額の金銭を拠出してまで「ウォッチメン」を手元に置きたかったのか。まずは「ウォッチメン」が極めて異色のアメコミ映画であること。通常の作品はスーパーヒーローを主人公に、派手なアクションで観客を引き付けるが、「ウォッチメン」は複数のヒーローが存在し、しかも彼らが次々と暗殺されるというダークな内容。勧善懲悪ではなく、エンディングも含め作品全体の是非を観客に問う構成になっている。

さらに2008年「アイアンマン」「ダークナイト」とアメコミものが全世界で大ヒット。特に「ダークナイト」は全米歴代興行収入2位にランクイン。洋画関係者は「不況はハリウッドものみ込んでいる。利益を見込める作品は賠償金を払っても確保したかったのでしょう」と話す。

桜舞う季節には、少々暗い作品ではある。歴史的事件を絡めているだけに「もしかしたら…」と思わせる部分もある。あなたも「知ってはならない真実」を目撃してみませんか?

ウォッチメン

原作は英国出身のアラン・ムーア氏(55)。JFK暗殺、ベトナム戦争、キューバ危機など歴史的事件の裏側には「ウォッチメン」と呼ばれる闇のヒーローたちの存在があったという設定。米ソ冷戦下、ニクソン大統領が3選を果たす中、ニューヨークの高層マンションから男が突き落とされた。胸にスマイルバッジを着けたその男は、かつて暗躍したウォッチメンの1人だった。男の死の裏には、人類を揺るがす陰謀があった--。監督は大ヒットした「300」のザック・スナイダー氏(43)。

裁判の経過
2008年2月

フォックスが映画化権について「ワーナーが権利を侵害した」と表明

2008年8月18日

カリフォルニア連邦裁判所がフォックスの訴えを受理。ワーナーが製作を中止するか、フォックスに金銭を支払うかのどちらかを求めるのが妥当との見解を示す

2008年12月24日

判事が「配給権はフォックスにある」と見解表明。2009年3月6日の全米公開が迫っていたこともあり、フォックスとワーナーの弁護士が和解決定

2009年1月16日

和解が成立し両社が共同声明を発表

弁護士山口寛

ヒューゴー賞

米SF界の功労者ヒューゴー・ガーンズバック氏にちなんで1953年に創設。現存する最も古いSF小説の賞。映画化された過去の受賞作は「デューン/砂の惑星」「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」など



アメコミ映画 大作ぞろい 2008年9月にかけ公開

2008年8月

アメコミ映画 大作ぞろい

2008年9月にかけ公開

「スーパーマン」「スパイダーマン」など、アメリカンコミックを実写化した作品は、ハリウッド映画の王道を歩んできた。2008年9月にかけて公開される3作品も巨額の費用を投じた大作ぞろい。それらの魅力を紹介する。

3作品は公開中の「インクレディブル・ハルク」と「ダークナイト」、2008年9月27日から公開予定の「アイアンマン」。ヒーローに”変身”する前の主人公の設定は、「ダークナイト」のクリスチャン・ベールと「アイアンマン」のロバート・ダウニーJr.が、いわゆるセレブで、「ハルク」のエドワード・ノートンが科学者だ。

主演俳優は30代から40代の大人の男たち。いずれも堂々と主役を張っているが、企業経営者にして発明家であるプレーボーイに扮(ふん)したダウニーが魅力的だ。決して万能ではなく欠点も多いヒーロー像に人間味がある。

インクレディブル・ハルク ヒロインの役柄ばっちり

ヒーローにはつきもののヒロインでは、「ハルク」のリブ・タイラーが一押し。父親ら周囲の声には耳を傾けず、かつての恋人である主人公をいちずに信じ抜く役柄が、物語の悲劇的な部分に重要な役割を果たしている。

「アイアンマン」のヒロインは主人公の秘書を演じたグウィネス・パルトローだが、女性記者役のレスリー・ビブも魅力的だ。

そしてヒーローが戦う敵。作品の成否のかぎを握る存在だ。「ハルク」の特殊部隊兵士として、ハルクを倒す執念が狂気に転化してしまう人物を演じたティム・ロスも素晴らしいが、「ダークナイト」のヒース・レジャーには及ばないだろう。

ダークナイト 悪役史に残るジョーカー

レジャーが扮したのは、悪の権化ジョーカー。ティム・バートン監督の「バットマン」で、ジャック・ニコルソンの怪演ぶりが語り草になった役だ。ニコルソンが恐怖の中にコミカルな一面ものぞかせたのとは違い、レジャーのジョーカーは、人間が内に持つ暗黒の部分を凝縮させたような人物。レジャーはこの作品出演後に急死したが、このジョーカーは悪役史に長く残るだろう。

アイアンマン 欠点の多い英雄に人間味

「ハルク」と「アイアンマン」は、物語のベースに、戦争と兵器の開発を続ける米国のありようが盛り込まれている。「ダークナイト」の舞台は犯罪が多発する都市で、マフィアのマネーロンダリング(資金洗浄)を題材にした。現代的な味付けが、大人の鑑賞に堪える作品へと押し上げている。

ヒーローの格好良さは好みによるところが大きいかも。スケールが大きいアクションシーンなど見どころも多い。注意すべきは、エンドロールが始まっても席を立たないこと。見比べた人にだけ分かるプレゼントのような映像が待っている。



アメコミヒーロー同一番組で大活躍 『ジャスティスリーグ』

2002年11月14日、産経新聞

スーパーマンもバットマンも集結!!

スーパーマンとバットマンが同じ画面で大活躍!! アニメ専門チャンネル「カートゥーンネットワーク」で放送中の『ジャスティスリーグ』(正義の同盟)では、7人のアメリカンヒーロー・ヒロインが世界平和のためにともに戦っている。それぞれの作品では主役のヒーローたちが、なぜ1つのアニメ番組に集結できたのか。

「アメリカのコミックスの場合、著作権が1人の作家ではなく、出版社にあるんです。スーパーマンもバットマンも、DCコミックスという出版社に帰属しています」とアニメ専門チャンネル「カートゥーンネットワーク」の広報担当者。

アメリカのコミックスは、ライター(脚本家に相当)、ペンシラー(画を起こす人)、インカー(インクで描く人)、レタラー(原稿に文字を入れる人)、カラーリスト(彩色する人)の分業で制作される。

制作スタッフの顔ぶれも各巻によって異なるので、だれが担当してもそれと分かるように、キャラクターは大胆な特徴を持ち、奇抜な色の組み合わせで描かれる。

例えば、スーパーマンならマントを着用し、青・赤・黄の配色-と、イメージをつかみやすいキャラクター像が設定されている。そうした日本とは異なる事情があるので、アメコミでは絶対的な信頼を得たスーパーヒーローが活躍する。

7人のヒーロー・ヒロインはいずれもDCコミックスが生み出したキャラクターで、「ジャスティスリーグ」はすでに1960年にコミックスに登場していた。そのため、アニメでの「夢の共演」が実現したという。

7人が結集すれば“最強”の正義の同盟。豪快なアクションシーンが最大の見どころだが、生まれや育ち、実力など設定の異なる7人の相関や感情の動きも注目だ。



「スパイダーマン」原作者、スタン・リー氏来日 アメコミ・マンガの融合を

2000年9月

リアルな絵と物語性 それぞれ影響

アメリカン・コミック界の大物原作者で、最近はインターネットを通じたデジタルアニメ配信に乗り出したスタン・リー氏(77)が、日本企業との合弁会社設立のため来日した。リー氏に、日米のマンガ・アニメ文化について聞いた。

コミック原作者、またはプロデューサーとしてスタン・リーの名は、アメリカではカリスマ的だ。アメリカン・コミックには「DC」と「マーベル」という2大ブランドがあるが、『スーパーマン』や『バットマン』を擁するDCに対し、リー氏は1960~1970年代にマーベルで『スパイダーマン』や『超人ハルク』などの新しいヒーローを次々に生み出し、天才クリエーターと呼ばれた。

中でも、1963年から始まった『X-メン』は、現在の発行部数が年間1300万部と、コミック史上最大の人気シリーズと言われる。最近映画化もされ、日本では2000年10月に公開される。

1978年の来日時に石ノ森章太郎氏と対談したリー氏は、日米のマンガ表現について「アメリカがリアリティーを重視するのに対し、日本のは極端に戯画化されており、よりファンタスティックだ」と分析した。が、22年後の今、両者が「歩み寄ってきた」点を強調する。

「アメリカのコミックは、よりファンタスティックになり、日本のMANGAは、よりリアルになった」

1980年代以後、日本のマンガ家の多くがアメコミに影響を受けたが、「アメリカのコミック・アーティストやアニメーターにも、『マンガ・スタイル』に影響を受けている者が多い」と指摘する。

「口が小さく、目や頭が大きいマンガ・スタイルは、アメリカに比べリアルではないが、キャラクター像やストーリーは非常に重層的で複雑。だから、幅広い年齢層にアピールする」。「日本のアニメはすべて好き。大友克洋の『AKIRA』に感銘を受けた」というリー氏はこう分析する。

「私は、スーパーヒーローも完璧(かんぺき)な人間ではないこと、内面に様々な悩みを抱えていることを描いてきた。そうした方が、読者が感情移入できるからだ。その点、私のキャラクターや物語作りは、マンガに似たところがあると思う」

日本では、過去何度もアメコミの翻訳紹介がなされたが、定着しなかった。マーベルも1度日本支社を作ったものの、数年で撤退している。作家がお互い影響し合うほどには、読者の相互交流は進んでいないようだ。「確かに、翻訳によってセリフのニュアンスが失われるなどの、文化的な難しさはある」と認める。

しかし変化の兆しも見える。日本版『X-メン』は、小学館プロダクションが1994年から刊行、アメコミは売れないという定説を覆し、既刊約40冊で累計80万部に達した。これなど、「リッチな日本のマンガ文化と、アメリカン・コミック文化を融合させ、世界にアピールする作品を発信したい」ともくろむリー氏には、明るい材料だろう。

リー氏は1999年に新会社スタンリーメディア(米カリフォルニア)を設立、インターネットを通じてオリジナルアニメやゲームを製作・発信しているが、このほど日本のベンチャーソフト社と組み、アジア市場に乗り出す意思を明らかにした。



【映画】人気アメコミを実写化

2005年9月17日、産経新聞

ファンタスティック・フォー 超能力ユニット

人気のアメリカン・コミックの映画化。これまでもアニメ化などが試みられたが、最新CG、VFX技術だからこそ表現可能となった臨場感あふれる実写映像は見ものである。

科学者で宇宙飛行士のリード(ヨアン・グリフィズ)は、宇宙嵐の研究のため、同僚の女性学者スー(ジェシカ・アルバ)ら5人で宇宙船に乗り、宇宙ステーションへと飛び立つ。が、宇宙船は宇宙嵐と衝突。5人は命こそ助かったものの、体の異変に気付く。宇宙放射線を大量に浴びたため突然変異が起こり、超能力が宿ったのだ。リードは手や足が自在に伸び、どんな形にも体形を変化させる能力を、スーは透明人間になる能力を…。リードら4人はこの能力を人命救助などに生かし、人々は彼らを「スーパー・フォー」と呼ぶように。だが、4人の前に強敵が現れる…。監督は新鋭ティム・ストーリー。「X-MEN」ばりの“ユニット・ヒーローもの”の誕生である。

ジョン・トラボルタとユマ・サーマンの共演といえば、名作「パルプ・フィクション」を思い起こす映画ファンが多いだろう。スピード感あふれる群像劇は「パルプ…」を彷彿とさせるクライム・ムービーの仕上げ。が、今作はさらに大胆にギャングものの枠を踏み越える。米音楽業界の闇をシニカルに描きあげる。コメディーのテイストを前面に押し出しながらも絶妙にリアルさを漂わせ緊張感に満ちている。